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リモートなんたら、オンラインなんたらという言葉を見たり聞いたりすることが増えました。あとに会議、飲み会などの言葉が入ります。テレビ番組でも「リモート出演」といった言葉が生まれ、あっというまに浸透しました。

「オンラインオフ会」なんて言葉もあるそうです。オフ会のオフはオンラインの対義語としてのオフラインのオフなんですが、それをオンラインでやるという矛盾が面白い。オンとオフで打ち消しあってカロリーゼロ。飲み食いしなけりゃホントにカロリーゼロ、支払いもゼロでオフ会ができます。

この、リモート○○、オンライン○○ですが、バーチャル○○で言い換えられますし、その言い方が普及してほしいと願っています。「えっ、バーチャルじゃちょっとニュアンスが違う気が…」というあなたや、バーチャルといえばバーチャルユーチューバー(VTuber)しか連想できない中三のムスメに、この先を読んで認識を改めてほしいです。

Virtual(バーチャル)の訳は「仮想」ではない

英語の「virtual」の本来の意味は「実質上の、 事実上の」です。しかし、日本では「バーチャルリアリティ」の翻訳が「仮想現実」として世の中に広まり、virtual(バーチャル)の日本語訳は「仮想」として定着してしまいました。

NHKサイトの「NHK文研」のコーナーに、いい感じの解説がありました。

VRにおけるvirtualの訳語としての「仮想」には、1990年代の半ばくらいから、VRや情報文化、哲学などの専門家から“適切な訳ではない”という指摘がなされてきた。virtualということばの“原義”は、「事実上同じような機能・効果をもつ」であり、「リアルとバーチャルはほぼ同義である」ので、「仮想とは似ても似つかないどころか、むしろ正反対とさえいえる概念である」というのである。

「VR=バーチャルリアリティーは,“仮想”現実か」NHK メディア研究部 谷 卓生(2020年1月1日公開)

VR=バーチャルリアリティーは,"仮想"現実か|NHK放送文化研究所

バーチャルリアリティは「仮想」という言葉に引っ張られて「実際には存在しない架空のもの」のイメージが強いですが、「実質的には現実と同じように機能するもの」といった意味なんです。

たとえばハンディキャップの人、高齢の人なんかも、デジタル技術により実質的にほかの人と変わらないように出歩いたり人と会ったりできる、そんなポジティブな意味合いが強い言葉なはずなんです、バーチャルリアリティは。

古い話ですが、ライブドア事件のときネット企業が虚業だとか言われてたのも、「ネットはバーチャルな世界 → 仮想の世界 → 実態がない → 虚業」というイメージが原因だと思います。

バーチャルオフ会、バーチャル帰省の方がしっくり来るはず

ということで、バーチャル=実質的には(そのものと同等の機能、効果)の意味を意識すれば、バーチャル会議、バーチャル飲み会などの言葉がしっくり来るはずです。来てきたでしょ?

バーチャル会議、バーチャル飲み会は、VRメガネをかけて「どうぶつの森」のような世界の中でのアバター(自分の分身となるキャラクター)を使った会議や飲み会じゃありません。それも面白そうですが、ここでは、実質的にはリアルのものと変わらない会議、飲み会という意味で使うこととします。

オンラインオフ会という妙な言葉も、バーチャルオフ会と呼べばいいんです。実質的にはオフ会だけど、今のこの状況下なので直接会わずに行うということですね。バーチャルは概念、オンラインやリモートは手段なんですよ。

オンライン帰省じゃなくバーチャル帰省と呼べば、ネットとデジタルツール(機器&アプリ、サービス)で帰省というイベントを「実質的には同じと言えるように実現できるのか?」を考えるきっかけになったと思います。

昔好きだったけど今はそうでもないおやつが用意されてるとか(わたしの場合イカの燻製)、ご近所のゴシップを聞かされるとか、どういう順番でお風呂に入るかとか、帰省のいろんな要素の何が実質的にはリアルと同じに実現できるのか? この部分は「バーチャルでいけるんじゃね?」とわかったところがあれば、今後もちょくちょく実施すれば帰省シーズンじゃなくても帰省できて、実家の親もお喜びなことでしょう。

今はバーチャルで実現できるかどうかの見極めをする時期